ペーター・シュレミエルの恋

たとえそれが、
火打ち石から飛び散る火花よりも
さらに短く儚い恋だったとしてもさ、
宇宙開闢から終焉までのパッションにも勝る
濃縮された恋ってあるんじゃないかな。

たとえそれが、
大銀河系の辺境にあるこの地球という星に生まれた
唯一の意味だったとしてもさ。
                   December 19,2020



一. 石畳の傍らに咲く
朝露に濡れたドクダミの花は 永い眠りから覚めた万葉の記憶 ハイカラな洋服を着た子供が土壁に不思議な絵を描く 割れた鏡に映された天平の女の臍
古都の喫茶店に置かれた陶磁器は ペルシアの切子ガラスに屈折する 過ぎ去る夜に今は昔の場所をさがす 路地に溜まる碧い水は忘却の水平線なのか 永劫の回帰を旅する人よ

二. この宇宙の開闢は創造主の溜息だったのか。 阿僧祇の試行錯誤を重ねてもなお、 御心に叶うプロトタイプは完成できなかったのか。 しかしそれでもなお、人々は健気に生きているではないか。 素粒子よりもさらに小さく、はるかに短命な、定かでない存在は、 時間と命名された足跡を残して、宇宙という器の中に消滅してゆく。 しかし、いつの時にか、 この宇宙のすべてが完全な調和と純粋なアガペーで飽和する。
                   November 9,2020