アードベッグの空き瓶

アードベッグの空き瓶が
曇りガラスの光を透して鈍い緑色に染まる雨の日曜日
私は再びあの暗く小さな空間の中で
海の底を漂う電気クラゲの夢を見ていた
君は憶えているだろうか


*

庭のプラネタリウム

今は昔、庭はプラネタリウムだった
星座早見盤に浮かび上がるの魔術的な暗号
夜のしじまの星座の中を悠々と移動してゆく
その小さな光の正体を僕は知りたかった


*

玉葱の隕石

新聞の折込チラシに掲載された
隕石の散りばめられたターコイズブルーの腕時計
神秘的なパワーを持っているという
その夜少年は窓格子の隙間から見える公園の中に
不思議な光を放つ隕石を発見した
真夜中、高鳴る鼓動を抑えつつ秘かに家を抜け出し
その光の場所にたどり着いたとき
妖しい光を放っていた隕石は既に玉葱の皮となっていた


*

シュレミエルの恋

たとえそれが、
線香花火の火花よりも
さらに短く儚い恋だったとしても
宇宙開闢から終焉までの
凝縮されたパッションにも勝る
恋ってあるんじゃないかな
たとえそれが、
大銀河の場末の星に存在した
唯一の意味だったとしても


*

無窮の孤独

ゼロの意味を理解できるだろうか
無限の意味を理解できるだろうか
ゼロは今までここにあったものが
消えて失せてしまうことではない
ゼロは無限収束の刹那でしかない
宇宙を埋め尽くす無数の星たちは
静かに君のことを見守っているよ
だから君はひとりなんかじゃない