-庭のプラネタリウム-

今は昔、庭はプラネタリウムだった
懐中電灯の灯りに浮かび上がる星座早見盤の魔術的な暗号
星々の散らばる漆黒の夜空を無言で悠々と移動してゆく
その天体の正体を僕は知りたかった

moon

 

-存在-

ゼロの意味を理解できるだろうか
無限の意味を理解できるだろうか
ゼロは今までここにあったものが
消えて失せてしまうことではない
ゼロは無限収束の刹那でしかない
宇宙を埋め尽くす無数の星たちは
静かに君のことを見守っているよ
だから君はひとりなんかじゃない

 

 

 


-玉葱の皮になった隕石-

新聞のチラシ広告に掲載された
隕石の散りばめられたターコイズブルーの腕時計は
神秘的な意味を持っているという
その夜少年は窓格子の隙間から見える公園の中に
不思議な光を放つ隕石を発見した
真夜中、家を抜け出しその光の場所にたどり着いたとき
その妖しげな青色の隕石は既に玉葱の皮となっていた

 

 


-ペーター・シュレミエルの恋-

たとえそれが、
火打ち石から飛び散る火花よりも
さらに短く儚い恋だったとしても
宇宙開闢から終焉までのパッションにも勝る
濃縮された恋ってあるんじゃないかな

たとえそれが、
大銀河系の辺境にあるこの地球という星に生まれた
唯一の意味だったとしても

             December 19,2020



-路傍の花-

朝露に濡れたドクダミの花は
永い眠りから覚めた万葉の記憶
ハイカラな洋服を着た子供が土壁に不思議な絵を描く
古都の喫茶店に置かれたペルシアの切子ガラスに屈折する